日本共産党茨城北部地区委員会                                   

 米軍再編の本質は、
 米軍と自衛隊が軍事的に一体化し地球的な規模で展開すること
 

(「新春対談/日本共産党委員長・志位和夫さん/一橋大学大学院教授・渡辺治さん/憲法守る国民の対抗軸を/政治の夜明けひらく年に 」より)→全文 1月1日付分1月3日付分

■米軍再編の現実の動きが改憲の狙いを浮き彫りに

 志位 もう一つ、米軍再編といわれる動きとのかかわりでも、改憲の狙いが見えやすくなる状況が生まれていると思います。米軍再編というと、在日米軍基地の問題ととらえがちですが、いま起こっていることの本質は、米軍と自衛隊が軍事的に一体化し、地球的な規模で展開するところにあります。
 2003年にファイス米国防次官(当時)が、まとまって地球的規模での米軍再編の構想をのべています。二つの大きな柱があって、一つは、彼の言葉でいうと、「米軍はこれからは駐留地でたたかうことはない。駐留地から遠く離れている場所に戦力を投射する」。要するに遠征しての殴り込みを、迅速に地球的規模で展開できる軍隊として再編成するということです。
 もう一つの柱は、同盟国との軍事的協力体制をつくりあげるということです。ファイス国防次官は、「われわれは同盟国に対して、派遣可能で、本当に使い物になる司令部および部隊を確立するように促している」といっています。今の自衛隊は「本当に使い物になる司令部」でもないし、「部隊」でもないというわけです。(笑い)

 渡辺 ラムズフェルド米国防長官は、この間の日米安全保障協議委員会(2プラス2)でいみじくも“自衛隊はボーイスカウトだ”といいました。ブッシュは政治的に孤立しているので、ああいう自衛隊でもとにかくきてもらうことに感謝するといっていますけれど、軍事的にはラムズフェルド発言のようにいらだっているわけです。

 志位 そうですね。日米が一体の軍隊として戦争をたたかうためには“ボーイスカウト”では困る(笑い)。“ボーイスカウト”から一人前に戦争ができる軍隊になってもらわないと困るというわけですね。
 アーミテージ前米国務副長官は、「(課題は)日本がどのような地球規模の役割を果たすかにある。あえて言えば、その決断には日本の憲法第9条の問題がかかわっている」(「読売」〇五年十二月四日付)といっています。自衛隊は、地球的規模で海外に出るところまでいったけれど、これから先は「どのような地球規模の役割を果たすか」が問われてくる。一人前に戦争ができる軍隊になるためには九条改定が必要だというわけです。米軍再編という現実に起こっている動きとの関係でも、九条改定の狙いが非常に見えやすくなっていますね。

 渡辺 おっしゃる通りだと思います。アメリカにとってみても、非常に切迫した要求になっている。そのなかでアメリカは非常に強い圧力を日本にかけてくる。対する日本の財界も、九条を変えないといつまでたってもアメリカと一緒になって覇権国とはなれないといういらだちを強めています。さきほど志位さんがふれられた日本経団連の改憲提言は、日本経団連としては初めての改憲論ですが、そこに財界の改憲衝動の強さがあらわれています。

 志位 そうですね。経済同友会は出していたけれど。

■海外での武力行使反対で大きな共同の輪を   

 渡辺 経済同友会は90年代以降改憲提言をいろんな形で出していますけれど、経団連は組織加盟の団体ですから慎重でした。その経団連が改憲論を打ち出して、とにかく九条と九六条にしぼって改憲をやれといった。自民党「新憲法草案」は、アメリカと財界、この二つの圧力の産物だということが明確です。
 自衛隊の海外での武力行使の是非、この点にこそ、今回改憲の最大の争点があります。たしかに国民の8割以上は自衛隊を認めています。しかし同時に、「毎日」の調査(05年10月5日付)では62%が九条の改正に反対しています。改憲派の人たちは、これをみて“国民だって矛盾している。よくわかっていない”“つじつま合わない”といっていますが、私は必ずしもそうじゃないと思います。
 国民の多くが認めている自衛隊とは、やはり新潟の地震とか阪神淡路大震災のときに出ているような自衛隊であって、海外で武力行使する自衛隊には反対なのです。とくに若い人は70%も九条改正に反対しているという。これは、海外で戦争するような軍隊になってもらいたくないというメッセージですね。だからそれをきちんと受けとめることが大事です。だから、自衛隊を違憲と思う人も、合憲だと思う人も――その場合の自衛隊は、海外で戦争をしない、武力行使しない自衛隊なんですが――海外での武力行使については反対だという大きな輪をつくることが、すごく大事だと思うんです。

 志位 まったく同感です。そこがいま憲法改悪反対の国民的多数派をつくるうえで、最大のカギですね。
 米軍再編と憲法との関係では、テレビ朝日系の「報道ステーション」という番組でたいへん衝撃的なルポをやっていました。米ワシントン州のフォート・ルイスに米陸軍の第一軍団の部隊がいるのですが、そこで陸上自衛隊が一緒に演習をやっている映像なのです。

 渡辺 私も見ました。すごかったですね。

 志位 すごかった。イラクにみたてた「地図にない町」をつくって、訓練用にビルや住宅五十二棟をつくって、突入作戦をやるわけです。米兵が「敵が見えたら撃て。撃ち続けるんだ」といってやると、自衛隊員がバッバッバッと撃って「敵二名射殺」と叫んでいる。ぞっとしましたね。
 イラクで実際に血なまぐさい戦争をたたかってきた米陸軍第一軍団が自衛隊を指導していて、その米兵は、「将来、本当の戦場で一緒にたたかえることを楽しみにしています」といっていました。

 渡辺 あの番組は、講演にいっても、ずいぶん話題になっています。ある人は「あそこまでいっちゃっていたら、もう九条なんてどうしようもないじゃないか」というのです。こうした声は、当然の危ぐですが、私はこう答えています。“あれは演習であって現実にはできない。九条の下では演習に終わらざるを得ない。あれを現実にやりたいというのが改憲の一番大きな狙いなのだ”と。

 志位 あの番組の最後で、米戦略予算・査定センターのグレバノビッチ所長がインタビューに応じて、「憲法第九条を改正しようという動きもあります。日米の部隊が共通の利益を守るため一緒にたたかったとしても驚きません」といっている。あの演習を現実にやるためには憲法を変えることが必要だというわけですね。
 米軍再編でも、キャンプ座間が問題となっていますけど、米陸軍の新司令部がアメリカからくるだけではなくて、陸上自衛隊の中央即応集団という海外派兵専門の部隊の司令部もきて、日米が司令機能を一体化して、海外に出ていこうという動きになっています。海軍は横須賀で一体化、空軍は横田で一体化しようという。沖縄を本拠地にした海兵隊でも、キャンプ・ハンセンにつくった都市型訓練施設で、米軍と陸上自衛隊が合同で訓練する動きがある。嘉手納の米空軍基地のF15を本土の航空自衛隊の基地に分散させる。米軍と自衛隊が、陸海空そろって一体になって打って出るという仕掛けづくりです。しかし、イラク戦争のような戦争を一緒になってたたかおうと思ったら、九条があったらできない。ここから九条改憲に連動してくるのです。

 渡辺 米軍再編は、おっしゃる通り、朝鮮半島からイラクまでのいわゆる「危険な弧」をカバーして、日米両国の軍隊が機動的に一体になって「ならず者国家」に先制攻撃を加える体制づくりです。ですから、米軍再編に関して私たちがもっとも注目し指摘しなければならない点は、自衛隊と米軍が一緒になって「戦争をする国」になる体制づくりだという点です。この点こそ、憲法改悪と密接に連動する米軍再編の焦点なのですが、マスコミはどうしても「在日米軍基地の縮小・再編問題」だけで米軍再編をとらえています。そうなると全体が全然わからなくなる。

 志位 そうです。いまいわれた「米軍再編の焦点」を広く明らかにしていくことが大切ですね。

(「しんぶん赤旗」2006.1.1)  

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