地方議員 リレー随筆

 諫早干拓の視察紀行 福田 明(ふくだ あきら)
北茨城市会議員

 総選挙後、長崎県の諫早干拓地を視察しました。この干拓は、無駄な大型公共事業の典型として全国的にも名を馳せている事業です。先の総選挙の際には日本共産党だけでなく、民主党までもマニフェストに事業の中止を掲げたほどです。

 視察には地元の共産党の福岡洋一・諫早市議に案内してもらい、丁寧な説明を受けました。干拓地の諫早湾は雲仙普賢岳に抱かれるように有明海に面した波一つない穏やかな海です。この地の干拓の歴史は古く、千三百年代の南北朝の頃から今日まで行われ、現在では長崎県随一の「穀倉地帯」となっています。

 しかし、現在、国営事業として行われている諫早干拓事業は、過去の干拓とは様相を一変させ「百害あって一利なし」の感をつよく持たざるを得ません。現事業は漁民などの反対により当初面積の約四割に縮小されましたが、総事業費は二千四百六十億円。「約七キロの潮受堤防で諫早湾を締切り、優良農地の造成や調整池をつくって洪水対策を行う」とされています。ところが、長崎県内でも三十八%の減反がやられ、農地の造成など全く意味がありません。以前にやられた干拓地の農地も減反されている状況を目の当たりにしました。 また、洪水対策も福岡さんの話によると「河川の浚渫を行えば充分に防げる」とのことです。今後はさらに、洪水対策と称して、川の上流にダム計画があるというのですから開いた口が塞がりません。

 漁業への影響は顕著で、潮受堤防を閉鎖して以降、海の環境が悪化し、貝、ひらめ、タイ、フグなどの魚が減少、特に「タイラギ」という貝は一日で三〇万円の収穫があったのが、現在では壊滅的な打撃を受けているとのことです。のりについても今季の初出荷量が過去最低であり、その原因は干拓の影響ではないかといわれ、県は六千万円の漁業補償を漁民にだすといわれています。干潟は「千億円、三〇万人の浄化装置に相当する」といわれ、それを破壊することの代償は本当に大きなものがあると考えさせられました。

 当初の目的が失われながら、依然として干拓事業等を推進する背景には事業受注企業からの政治家への献金があります。自民党長崎県連や長崎選出の久間議員、知事、諫早市長等には多額の献金がされています。また、長崎の民主党は干拓推進の立場であり、いくらマニフェストで中止と唱えても、真実味が薄いと言わざるを得ません。長崎でも政党として住民や漁民と共に反対しているのは共産党だけとのことです。

 福岡さんと諫早名物のうなぎを食べながらの雑談の中で「茨城にも無駄使いの典型の港がありましたよね。前の選挙のときには随分演説に利用させて頂きました」と述べ、常陸那珂港の無駄使いが遠く九州でも有名なことに驚かされました。実は常陸那珂港の総事業費は六千八百億円であり、諫早干拓事業の二.八倍の巨額であることを私は諫早に来て初めて知りました。「船の来ない港に六千八百億円注ぎ込むとは考えられない」との福岡さんの言葉に、あらためて常陸那珂港の建設ストップの運動を諫早干拓同様、進めていくことの重要性を感じて諫早を後にしました。 (2003.11.23.北茨城民報より)