選挙公報を求める運動を 金子 卓(かねこ すぐる)
大宮町会議員
 

 大宮町では議員選挙の時の『選挙公報』が発行されていません。今年3月におこなわれた第1回定例議会に「市民オンブズマンいばらき」から選挙公報の発行を求める陳情が提出されましたが、町議会はこの陳情を継続審査(私は採択を主張)としてしまいました。この陳情の審議の中で県内の発行状況が明らかになりました。
 県の資料によると、昨年12月末現在で市町村議員選挙の選挙公報を発行している自治体は市が22市のうち13市、町村が61のうち21です。今年4月のいっせい地方選で1市3町村が新たに発行しました。
 県内の発行状況をみて、私たち日本共産党北部地区委員会の地域の発行状況が著しく少ないことがわかりました。地区内で発行しているのは、日立市、那珂町、大子町、東海村だけです。この状況は私たちの運動不足の結果と思い、今回の随筆のテーマとさせていただきました。

 大宮町では6月の第2回定例議会に町民の署名を添え、私を紹介議員として、選挙公報の発行を求める請願書を提出しました。しかし、大宮町議会は、先の市民オンブズマンいばらきから出された陳情と今回の請願を不採択としてしまいました。選挙公報を発行することに賛成したのが私だけだったことには本当に驚きました。
 請願を不採択としたことにたいする私の反対討論と総務委員会での請願審査の状況を傍聴した方の「傍聴記」(第1回定例議会から常任委員会の傍聴もできるようになった)を紹介して、今後の参考にしていただきたいと思います。『選挙公報の発行を求める運動』を呼びかけます。

■「選挙公報の発行を求める請願書」を不採択とすることに反対する討論から

 「選挙公報の発行を求める請願書」を不採択とすることに反対する討論をおこないます。本請願は、町議会議員選挙の際、公営掲示板や候補者カーだけでは候補者の公約や政策がよくわからず、候補者を選ぶための判断材料が不十分だとして、選挙公報の発行を求めるものです。請願書にも記されていますが、4月18日の茨城新聞一面に「一票行使で情報格差」という見出しで選挙公報発行に関する記事が載っています。記事によると、4月におこなわれた統一地方選挙で19の市町村が議員選挙がおこなわれたが、そのうち未発行は4市町のみであります。今回初めて4市町が選挙公報を発行しました。県の資料でも、昨年12月31日現在で、すでに34市町村が選挙公報を発行しています。今年3月と今月に合計1300名の町民の署名を添えて出された町長・議長に対する要望書のなかにも、選挙公報の発行の項目も入っています。

 今年の第一回定例議会には、市民オンブズマンいばらきから、選挙公報の発行を求める陳情が出されています。このように、選挙公報発行も求める有権者の願いはまことに強いものがあります。また、この陳情を議会は継続審査としていますので、それぞれの議員が調査する時間は十分にあったと思います。しかるに、先ほど総務委員長から報告のあった、今回の不採択とする理由はあまりにも請願者、また有権者に不誠実な内容です。

 選挙ポスターには公約や政策はは書かれていないのが普通です。候補者カーからの生の声と言いますが、名前の連呼だけと毎回批判の声があがるように、政策・公約を堂々とのべる候補者はいったい何人いるのでしょうか。この不採択とする理由で納得する町民はいないと思います。これらのことを承知のうえ、不採択としたことは、結局、先の茨城新聞の記事の中で、「行政としては選挙の啓発につながるので発行したいが、議員側から積極的な要望がないので、『公報を出したらどうですか』とは言いにくい」と本音を明かす職員もいると、発行していない市の話が紹介されていますが、大宮町も同じじゃないか言われてもしかたが無いと思います。

 大宮町議会議員全員の見識が問われる問題だと考えるものです。有権者に配る時間がないのではないかと言う意見もありますが、ご存じのように、大宮町は、町長選においては、すでに選挙公報を発行する条例ができており、事務手続は有権者への配布を含めて十分に確立されています。那珂郡内でも、東海村・那珂町ですでに実施しています。ちなみに、那珂町では一部50円で町のシルバー人材銀行の方々に各家庭への配布を委託しています。これらのことが大宮町でできないことはあり得ません。

 以上の理由で、この請願は、不採択とすることなく、採択をし、議会としての意思を町執行部・選挙管理委員会に示し、この九月の町議選で選挙公報を発行するようにすることこそ、町民の期待にこたえる道だと確信するものです。

■傍聴された方の感想から

 6月5日、「 選挙公報の発行を求める請願」 が総務委員会で審査されるので傍聴に出かけた。委員は日本共産党の金子議員(請願の紹介議員)のほか5人。審査の中では、「町議会の選挙は日数が少ないから有権者に届けるのが難しい。」「多額の金をかけて発行しても、ろくに読まないで捨てられてしまうのでムダだ。」「まだ県内の町村の3分の1しか発行していない。もっと多くの町村で出されるようになってからでいい。あせって発行しなくても。」こんな反対意見が金子議員以外から次々と出される。

 金子議員は、「那珂町や東海村では発行しているし、配布も努力すれば可能。ぜひ発行にふみきるべきだ。『ムダ』というのは国政選挙や県政、町長選挙での公報を否定する意見で、どうかと思う。公的に発行される選挙公報はぜひ必要だ。」と採択を主張したが、採決では、 賛成1、反対4で「不採択とすべきもの」にされてしまった。

 町議会の選挙では大宮町では公報が発行されないので、有権者はポスター(公営掲示板…町内全体で120か所)と、候補者の宣伝カーしか公に候補者を知る手段はない。ところが、ポスターは顔写真と名前くらいで政策は書かれていないし、宣伝カーは「○○でーす。よろしくお願いします。」というのがほとんどで、政策を訴えるのは何人かだけ。そのほかの候補者は町政についての政策などは話さないから、議員になって何をやりたいのかわからない。

 これでは多くの有権者や、他の市町村から転居してきた方々、それに新しく有権者になった方たちは、何を基準にして議員を選んだらいいのか。これも政治離れの原因のひとつではないかと思う。
 ある議員は、「みんな選挙のときには、政策などを書いたビラやパンフレットを配るんだろう。それで十分じゃないか。」と言っていた。ビラやパンフレットも詳しい政策を知るのには大事だが、たくさんの候補者を比較して一人を選ぶのに、町選管が責任を持って全部の世帯にとどける選挙公報は有権者が町政に関心を持つための大事な手段だと思う。
 「どうせ配っても読まずに捨てられてしまうから無駄だ。」と言った議員もいたが、有権者・町民をこれほどに見くだし、バカにした発言が公の委員会の席で言われるとは…。それはこの日一番の驚きだった。             
 さて、次は最終日(13日)の本会議。委員長から「この請願を不採択にすべき」との報告があり、討論では金子議員が採択するよう求めたが、結局17対1で、「不採択」が決まった。
 私は、「この人は採択に賛成するかも…」と思う議員が何人かいたのだが金子議員以外は全員不採択に賛成してしまった。なぜ選挙公報を発行することをそんなに嫌うのか、有権者にきちんと自分の政策を知らせることがそんなに難しいのか、なんとも納得のできないこの数日間だった。