投 稿
  
「鉄道は未来の財産だ」−−ちん電を守る妙案がいっぱい
        NHKテレビ「ご近所の底力」
(2004年9月2日放映)から学ぶ

永 井  孝 二
 4年前に鉄道事業法が改悪され、廃線には国の許可が必要なく、1年前までに届出ればよいことになった。そのためこの3年間に、全国で18の鉄道が廃線にされた。
 番組では、この10年で乗客が7割も減り、来年7月で「廃線やむなし」(去年11月発表)としている南海電鉄貴志川線(和歌山市と貴志川町をむすぶ14.3km)の沿線住民がスタジオに集まり、住民パワーで鉄道を守った全国各地の取り組みから教訓を学ぶというものであった。

<自転車持ち込みで乗客5割増>
 熊本電鉄では12年前から、電車内に自転車を持ち込めるようにした。ただし、午前9時から午後3時半の間だけである。これが買いもの客はもちろん、病院や職場に行く人にも利用され乗客を5割増やすことに成功した。自転車は手荷物扱いなので行政の許可は不要なのである。

<枕木オーナー制度で意識を変える>
 平成筑豊鉄道(福岡県)では、1本500円で枕木のオーナーになってもらう制度を始めた。現在500人が応募している。目的は金集めではなく「自分の鉄道だ」という愛着=マイレール精神を持ってもらい、身近に乗客を増やすところにあるという。

<地域全体を味方に廃線を食い止めた>
 万葉線(富山県高岡市)の場合は、住民が勉強会を始め、大学教授の協力も得て「出前講座」を無数に開き、世界の事例まで調べた。話し合いも「廃線か存続か」だけでなく「街の将来はどうあるべきなのか」について進めたという。
 こうした運動が1年間続き、「車にたよる生活を見直そう」「街ににぎわいを取り戻そう」「電車は環境にやさしく、お年寄り、子どもが利用しやすい乗り物」という声が広まってゆき、利用してない人たちからも「残した方が良い」という声が出されるようになった。これが行政を動かし、第3セクター方式で「万葉線」は存続されたのである。「あの電車はおじいちゃんが残したんよ、と孫に語ることができる」「鉄道は未来の財産である」という言葉が印象に残った。

<上下分離方式と住民の運営参加>
 えちぜん鉄道(福井市)の前身、京福電鉄は2度の事故のため運行を停止し、住民は2年以上にわたって代替バス≠体験した。福井市、勝山市など沿線9市町村が存続の方向をうちだし、第3セクター方式で「えちぜん鉄道」が設立された。こ
 こでの特徴は、線路の保守を県が、電車運行を新会社が受け持つという上下分離方式を取り入れたことと、住民も出資(6000万円)して新会社の運営に関わっていることです。住民から経営改善のアイデアがどしどし出されているが、採用されたものとして「無料の貸し出し自転車」(7つの駅に130台=放置車を再利用)と「鉄道とバスの乗り換え地図」の発行が紹介された。こうして、えちぜん鉄道は月3万人の乗客を増やし、運賃を15%値下げし、終電車の時間を30分延長することができた。

<代替バス≠フ暗い未来像>
 8月6日行われた「日立電鉄線を存続させる会」の日立市長への要請行動のとき、私は電鉄が発表からわずか5ヶ月で廃線届を出したことを非難し、「廃線時期を延長してでも、市民が納得いくような話し合いをもつよう努力してほしい」と言った。すると、豊田企画課長は「電鉄は法律どおりにやっており、何も言うことは出来ない」と答えた。もはや企業の代弁者というほかなかった。
 市民の声に耳を貸さず、代替バス≠押し付けようとしているが、その未来がどんなものか番組から紹介しておこう。富山市の例では13本が半分に減り、朝の2時間だけ運行されている。国土交通省の資料によると、全国9路線の代替バスは、平均1日65%の乗客が減少し、運賃は34%も値上げされているのである。
 これらの教訓から学び、ちん電を守る運動を発展させて、企業ではなく市民の方を向いた当たり前の市政を取り戻していくことが今求められていると思った。
(日本共産党日立市金沢後援会ニュースより転載)

〔ホームページ担当より〕
  録画をご覧になりたい方はご連絡ください。 メールまたは電話0294-53-8501

「投稿」目次に戻る