日本共産党茨城北部地区委員会                                   

 水戸地裁  被ばく住民の請求棄却 
       
JCO臨界事故 原告は控訴へ

 1999年9月に起きた茨城県東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所の臨界事故で、被ばくした住民2人が健康被害などの補償を求めて同社と親会社の住友金属鉱山を相手に、計約5760万円の損害補償を求めた訴訟の判決が27日、水戸地裁であり、志田博文裁判長は請求を棄却しました。
 志田裁判長は、住友金属への請求を「原子力損害賠償法により、賠償責任はJCOに限られる」として退けた上で、「事故や被ばくによって健康被害が発生したとは認められない」としてJCOの賠償責任を認めませんでした。
 原告は同県日立市久慈町の大泉昭一さん(79)と妻恵子さん(68)。2人は事故が起きた転換試験棟から約130bの場所で経営していた自動車部品加工工場で被ばくしました。
 昭一さんは既往症の皮膚病が悪化し、恵子さんも心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと主張。原告側は控訴する方針です。

 JCO臨界事故

 茨城県のJCO東海事業所で1999年9月30日、ウラン溶液製造中に制限量を超えるウランを含む溶液が沈殿槽内に入れられ、核分裂反応が連鎖的に続く「臨界」が発生し、中性子線などが放出されました。
 付近住民ら666人が被ばくし、このうち事業所の作業員2人が死亡しました。2003年3月、元事業所長ら社員6人と法人としてのJCOに業務上過失致死罪などで有罪判決が言い渡され、確定しました。
(「しんぶん赤旗」2008.2.28) 
     

 原告側は3月6日、東京高裁あてに控訴状を提出しました。→東京新聞
 JCO臨界事故、9.30茨城集会実行委員会と茨城県原発を考える会は、3月3日、次の声明を発表しました。
 
2008年3月3日  
JCO臨界事故・健康被害裁判の不当判決に抗議する声明  
JCO臨界事故、9.30茨城集会実行委員会委員長 田村 武夫
  茨城県原発を考える会会長 中村 敏夫
 1999年9月30日に東海村の核燃料加工会社JCO東海事業所で起きた臨界事故から8年5カ月が経過。同事故で被ばくした大泉昭一・恵子夫妻が原告となって、JCOと親会社の住友金属鉱山を相手に健康被害の補償と計5760万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2月27日、水戸地裁であり、志田博文裁判長は原告の訴えにはまったく耳をかさず、国と会社側の言い分だけを鵜呑みに、「原告の請求をいずれも棄却する」と不当な判決をくだした。

 今回の訴訟で争われたのは、臨界事故と健康被害の因果関係である。公判では、原告の主治医らが証人に立ち、原告の発症や病状の悪化が「JCO臨界事故に起因する」ことを余すところなく立証してきた。ところが判決文は、それには一言も触れず、昭一さんの皮膚病や糖尿病の悪化については「過労・ストレスなど事故に関係ない要因が影響した疑いもある」とした。また、事故で恵子さんが心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとの主張には「診断基準を満たさないからPTSDとは認められない」と退けた。こうして判決は、「被ばくが健康被害や損害を発生させたと認める高度の蓋然性の証明はない」と意味不明の言葉で原告の請求を棄却した。

 同事故調査の経過を見ても、ウランの発注者である旧動燃が粉末ウランをウラン溶液に変え、無理な工程を押しつけた責任や、国の安全審査に重大な手落ちが判明しながら、刑事裁判はそれらをすべて免罪し、JCOだけに責任を押しつけた。一方JCOは、事故による経済的な被害には風評被害をふくめて賠償に応じ、早期決着を図りながら、健康被害の補償にはいっさい応じない頑なな態度に終始した。これらの不当な対応は、国の「安全」無視の無謀な原子力行政と不可分の関係にある。

 国の委託を受け、毎年茨城県が実施している健康調査には被ばく住民が毎年300人前後受診しており、周辺住民は今なお、見えない中性子線の恐怖に怯えている。事故後も教訓は活かされず、2004年8月の関西電力・美浜原発3号機の2次系配管破裂による11人の死傷事故や2007年3月の全国12電力会社によるトラブル隠しやデータ改ざんの点検結果報告書で458件の不祥事が明らかになり、そのなかで北陸電力・志賀原発やと東京電力・福島第一原発3号機で臨界事故隠しが明らかになった。また、日本原電・東海原発2号機では2000年8月、高圧炉心スプレー装置が自動起動したという、あわやの重大事故まで隠ぺいされてきた。

 私たちは事故の教訓を風化させないため、事故発生以来、「JCO臨界事故を忘れない,原子力事故を繰り返させない」の2つのスローガンを掲げて、毎年茨城集会を成功させてきた。その立場から、今回訴訟の不当判決に厳しく抗議し、引き続き、公正な裁判のあり方と安全優先の原子力行政の確立を求めて奮闘する決意を表明する。
以上
  
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